膨らむ処理費12兆円 原発事故、国民にツケ

検証・大震災 東日本大震災5年 福島第1原発事故(その1) 大熊・帰還困難区域
 毎日新聞 2016年2月21日

 東京電力福島第1原発事故は原発の運転に巨額の費用リスクが伴うことを思い知らせた。電力業界の雄だった東電は実質国有化され、国は原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通じて資金を注入している。処理費用の見通しは約12兆円。除染、賠償、廃炉・汚染水対策−−そのコストはどのように発生し、どこから資金が生み出され、どこへ流れたのか。複雑な図式の裏側を探ると、事故時の責任の所在が曖昧な原子力行政のゆがみが浮かんだ。

「帰れるのかどうか国の方針も分からないまま除染したって、業者がもうかるだけじゃねえか」。大熊町下野上地区の岩本さんはつぶやく。同地区の95ヘクタールの除染の事業費は200億円。請け負うのは、99・9%の高落札率で1者応札した清水建設を幹事とする共同企業体(JV)だ。