東日本大震災5年 原発事故処理費 記者の目

 毎日新聞 2016年3月30日

国民負担、説明尽くせ
 東京電力福島第1原発事故の処理費用はいくらで、誰が負担しているのか。検証記事を2月21日朝刊に掲載した。総額は12兆円を超え、多くが電気料金や税金で賄われているのに、ツケ回しの実態が国民には見えにくい。30〜40年続く事故処理で、国民にどれだけしわ寄せがくるのか、東電と国は毎年その仕組みや金額について丁寧な説明を尽くすべきではないか。事故の深刻な結果を忘れないために必要なことだと私は思う。

被害者への賠償費用は、東電に加え原発を抱える全国の電力会社が、事故後に値上げした電気料金に上乗せするなどして少しずつ返している。

 実質は東電の負担でなく、私たちの電気料金や税金が原資となっていると思うと、その使い道についても関心が強まるのではないだろうか。

 原賠法が掲げる事業者の無限責任の原則は事実上崩れている。東電と国は国民に大きな費用負担を強いている現状を明らかにし、原発が抱える事故処理のリスクを見つめ直すべきだ。