【社説】浪江町のADR 救済の原点を忘れるな

 2016年2月5日 東京新聞

福島原発事故の賠償をめぐり、福島県浪江町の住民が国の紛争解決機関に行った増額の申し立ては、東京電力が和解案を拒んでいるため解決できない。東電は加害者として救済の原点に戻るべきだ。
 浪江町の町民は東電から正当な理由を示されないまま、二年近くも解決を放置されている。
東電は、その事業計画で「和解案の尊重」を約束した。この件で、ADRが「和解案受諾勧告書」を出したのは異例の対応といえる。東電に対して和解案の受諾を迫り、「拒否する合理的理由はない」と断じた。
 申し立てに参加した浪江町民のうち、四百四十人以上が亡くなった。かつての公害裁判などもそうだが、人権救済を訴えた被害者が、解決の日を待たずに世を去ることが、どんなに無念なことか。