「フクシマ」を理由に来日しないオケ団員

 「西部劇における人生の汚点」 赤川次郎
  「図書」(岩波書店) 6月号より抜粋 

 この原稿を書いている四月半ば、ドイツの名門オーケストラが来日公演を行っている。
 私も数日後に聴くことになっているのだが、知人の音楽家が、そのオーケストラの旧知のメンバーと話したところ、オーケストラのメンバーの内、実に四十人が「フクシマ」の原発事故を理由に来日を拒んだそうで、三分の一以上が「トラ」(エキストラの意味)だということだった。
 そういう事実が全く報道されないというのも問題である。公演のスポンサーや電力会社への遠慮がないとはとても言えないだろ。
 それにしても、ヨーロッパの人々から見れば、福島第一原発が今も汚染水洩れを続け、収束、廃炉にする見通しさえ立たない状況で、「アべノミクス」だの「オリンピック招致」だのと浮かれている日本人は、到底理解しがたい存在だろう。
 チェルノブイリから四半世紀が過ぎて、今もウクライナでは子供のがんの問題に取り組んでいる。
 株価が上ったからといって、誰の暮しが楽になるのか。物価が上り、企業は簡単に従業一員を解雇できるようになり、生活保護は削られ……。この政権が高支持率を保っているという記事を見ると、その数字を疑いたくなる。
今必要なのは、冷静に状況を見る目である。まだ間に合う。
 あの「ボナンザ」の司令官のように、「わが人生最大の汚点だ」と言わずにすむように。(つづく)
                 (あかがわじろう・作家)
  http://blogs.yahoo.co.jp/caesar_mozart/17844998.html

 -------------- 抜粋以上 --------------------------
■ 西部劇「ボナンザ」とは:
  http://edc2.jibunkyo.main.jp/?eid=31
  > いずみたかひろの日本児童文学編集中記
  > 赤川次郎氏のエッセイのこと
  > 2013.06.06 Thursday 20:28