東電管理職に10万円一時金 社員優遇に疑問符

2013年7月20日 東京新聞

 東京電力の広瀬直己社長は十九日、都内の電気事業連合会で記者会見し、課長級以上の管理職に一律十万円を一時金として二十二日に支給すると発表した。「幹部職員の退職に歯止めをかけるため」としている。しかし、円安で消費者の電気料金負担が増し、福島第一原発事故に伴う賠償や除染が遅れる中での幹部の待遇改善には批判の声も上がりそうだ。 (吉田通夫)

 広瀬社長は「一人当たりはわずかな金額で、これで元気になるかという意見はあると思う。しかし、頑張りに報いるというメッセージを職員の心情に送りたかった」と説明した。東電では原発事故後税金の注入などを受け、一般職の年収を二割、管理職は三割カット。今年六月までに千二百八十六人が依願退職し、うち管理職も五十一人が辞めた。

 同社長はこれまで二〇一四年三月期連結決算を黒字にする目標を強調。柏崎刈羽原発新潟県)の早期再稼働や徹底したコスト削減を目指している。
 だが、今回の一時金の支給対象は約五千人で総額五億円の人件費増となり、黒字化目標と矛盾する。
 東電内からも「一人当たり十万円で退職に歯止めがかけられるかは分からない」と効果を疑問視する声もある。

 一方で、五億円あれば、被災地の一定範囲の除染や、賠償にも充てられる。東電は四月から個人所有の家具の賠償を本格化しており、六月十九日までに一万六千八百件、七百七十七億円分を支払った。一件当たり平均四百六十二万円で、五億円あれば百八人分をまかなえる計算

 円安の影響で燃料費が上がっているため、東電管内の電気料金は六カ月連続で値上がり。八月の一般家庭向け料金は、モデル世帯で七千九百七十八円と過去最高を三カ月連続で更新、二月時点より七百五円も高い。消費者負担は重くなっており、利用者から疑問の声も上がりそうだ。

 経済ジャーナリストの町田徹さんは「国の支援で辛うじて生き永らえているだけで、事実上の破綻状態にあるのだから、社員が流出するのは当たり前」と指摘。「本来なら厳しい合理化に努めなければならないのに、社員を優先するような態度は電力利用者の理解が得られない」と批判している。