書評『原発は火力より高い』金子勝著

 つづいて。

  『原発は火力より高い』 金子勝著、岩波書店

 電力会社の経営をめぐる状況はどんどん変化している。けれども市民の間ではあまり関心を持たれていないような気がするので、不払いプロジェクト的に情報を紹介していきます。この本も必読。

 「『原発は安い』のウソを徹底的に暴く! 数字をもとに、脱原発への道筋を具体的に提言する」という帯が期待を感じさせます。

 原発の電気は一体何円なのか?という点でおもしろい答えがひとつ。金子の試算では、福島原発事故前の 2010 年3 月期の日本原電の販売額1450億円を、販売電力量の136億kWhで割ると、1kWhあたり11円。いきなり他の電源を越えている。(火力:10.5円、水力:7.5円)

 これに立地対策費、技術開発費、事故収束費用、賠償費用が乗ってくると思うと、げんなりする。ぜったい脱原発した方が、よい。金の問題だけではないけれど。

 賠償費用が10兆円になり、それを全国の電力会社が負担した場合、島根1号機での発電単価は35円/kWh、もっとも安い玄海4号機でも17円/kWhになる。

 原発推進派は、こういう本を読んで、どんどん反論してもらいたいものだ。

 金子によると、現在の原発政策は、バブル崩壊後の「失われた20年」と同じことをやっている。原発という巨大な不良債権処理の先送り、税金(賠償、収束費用)投入、大企業保護……。

 たとえば日本原子力発電。再稼働不可能な老朽原発をかかえて、福島事故以来1kWも発電せずに2年が過ぎたこの会社が、いまだに存続している。破綻している企業同士が支え合っている。その原資は私たちの電気代と税金だ。

 電力改革のビジョンから反TPPまで、幅広く語りつつ、実にコンパクトな一冊。ぜひ読んで、お近くの図書館にもリクエストしてください。