原発賠償和解案 東電は解決に協力せよ

2014年7月5日 東京新聞【社説】

 福島県浪江町の住民に原発事故の慰謝料の一律増額を認めた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、東京電力が和解案を拒んだ。東電が早期解決に協力するのは義務だ。和解案に従うべきだ。

 弱い立場の住民に個別に被害の証明を求めるのは負担が大きい。限界もある。だからこそ、浪江町は町民に共通する苦悩を探り、集団での申し立てを選んだのだ。
 和解不成立となれば、裁判しかなくなる。故郷を奪われ疲弊した人々に、さらに時間も労力もかかる裁判を強いるのはつらすぎる。

 和解案は中立の立場をとる仲介委員の法律家が被害者と東電の双方から意見を聞いて提示される。拘束力はないが、東電は賠償を早期解決するため、尊重すると約束したことを忘れてはならない。