フクシマ賠償 「時効」特例法案のまやかし

 2013年5月15日 東京新聞 こちら特報部

「政府は特例法案によって『時効後でも損害は賠償する』とアピールしているが、その中身はでたらめ。被災者は切り捨てられかねない」

時効中断の対象が原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)での係争案件に限られているためだ。日本弁護士連合会(日弁連)も特例法とは別の立法措置を求めている。

東電による賠償の時効をめぐっては今年1月、広瀬直己社長が「3年間でおしまいとの考えはない」と語った。しかし、その翌月、特別事業計画には「(時効は)賠償請求を促す書類を受け取った時点から3年間」と記された。「社長発言や政府法案で『時効がなくなった』と誤解し、安心しきっている人たちも少なくない」

低線量被ばくの影響についても、数十年後にどんな健康被害が出てくるかは未知数。東電の内藤義博副社長は国会で「晩発性の障害も因果関係がはっきりすれば、賠償する」としているが、因果関係を誰が立証するのかには言及していない。原爆や公害では、被害者に立証責任が課せられ、「泣き寝入り」を強いられる根拠になった。

「鉱業法」は「進行中の損害についてはその進行がやんだ時から起算する」と規定。2004年の鉱山でのじん肺訴訟で、最高裁も「加害行為が終了してから相手の期間が経過した後に損害が発生する場合には、損害が発生したときが起算点となる」という判決を出している。

森川弁護士は「放射性物質の影響も、どのように、いつ表れるかは予想できない。状況に応じて時効を延ばせるようにするべきだ」とみる。